History|クアラントットのジュエリー ヒストリー

そこに物語をつくりたい

そこに物語をつくりたい

真っ白な紙に、思いのままに世界をつくっていける。

絵を描くことや、お話をつくることが好きなのは、たぶんそれが面白いから。

大人になり、ジュエリーを身につけることを覚え始めたころ、なんとなく心が躍るものに出会えずにいました。

ファッションのものであっても、ジュエリーは長く毎日のように身につけるもの。そこにもっと自分らしさがほしいと感じていた私は、ちょっとした遊びのつもりでジュエリーづくりを始めたのでした。

思い通りに作るには、一から作らないといけない。

彫金の学校に通い始めました。

 

彫金はとても地味な作業の繰り返し。

 

金属の棒を、熱して、まげて、溶接できるようになるまで、糸鋸で何度もすり合わせて・・・・。

ようやく溶接ができても、そこから真円になるまで金づちで整えて、やすり掛けは、長い道のり。番手を変えてひたすらにやすりをかけていく。

 

シンプルなリングができあがるまで、恐ろしいほどの時間がかかるものでした。

「それ、いいね!」

「それ、いいね!」

次はこんなものが作りたい。その次はこんなものを・・・!好奇心のままにつくっているうちに6年の歳月が過ぎ、すっかりいろんなものを作ることができるようになっていました。自分で身につけていたら、それを見た友人が、「それ、いいね!」とオーダーしてくれて、それを身につけた友人の会社の同僚が、「それ、いいね!」とオーダーしてくれて・・・・。

 

この人には、こんなものが似合いそう・・・・。そう想像しながら作っていく。

自分のためでなく、誰かのためにつくる楽しさを知っていった頃、

感じていたのは、もっと世界のジュエリーを知ってみたいという気持ちでした。

イタリアの日々

イタリアの日々

悩んだ末に、仕事を辞めて、イタリアへ。

世界中から、伝統のある地で学びたいという人が集まってくるフィレンツェ。

イタリアのジュエリーづくりは、プロセスが日本とまるで違いました。
緻密な日本と違って、なんとまあ、アバウトなこと・・・!
その代わり、火の音や手加減といった経験値を重視していて、
仕上がりはなんともいえず味わい深いのです。

やはりジュエリーを通して彫金が発展してきた国だけあって、道具も手になじむように
カーブしていたり、職人が自分の手に合わせて自身でつくる道具も。
職人たちが自分たちで工夫して使っているものもたくさんあり、
自転車の車輪の一部や、たばこの吸い殻、なんと干したイカまでもが彫金の道具としてつかわれているのです。

フィレンツェにしかない「フィレンツェ彫」という手彫りの技術や、様々な伝統技法にふれて、作りたいものがどんどんふくれあがっていました。

クアラントット誕生

クアラントット誕生

「ブランドを作ろう。」
それはイタリアに来る前からぼんやりと考えていたことではあったのですが、それをはっきりとした覚悟にするために、今ブランド名を決めよう、と思い立ちました。

自分のためでなく、身につける人のためのジュエリーでありたい。
だから、ブランド名に、自分の名前や、思い入れをいれたくない。
それ自体に意味のない言葉にしよう。

ふと目に入ったのが、その時住んでいたアパートの住所。

48番地。

イタリア語で、「quarant’otto」

そして、同時に、ブランドポリシーとしていくことに決めたのは、
「Jewelry makes you happy! ~毎日がちょっと幸せになるジュエリー」という言葉。
自分らしいジュエリーに出会えた人の毎日が、ちょっと幸せになるようなジュエリーをつくりたい。 かつて自分が感じた思いを、誰かに届けていくことができたら・・・・。

その日から、クアラントットのジュエリーの原型を作り始め、それらは今も店頭にならんでいます。

最初のおきゃくさま

最初のおきゃくさま

その日も、48番地のアパートのそばのカフェでデザインを描いていました。

3つの工房を掛け持ちして修行していたころ、まっすぐに家に戻らずに、
ここで一息つくのが習慣になっていました。

イタリアのカプチーノは基本的にかなりぬるめ。寒い冬には「熱々で!」とオーダーしていました。

ある日、製作途中のリングの原型を手にとって眺めていた時、
「それ、いいね!オーダーできるかな?」

声をかけてきたのは、いつも熱々のカプチーノをつくってくれるカフェのバリスタ。
クアラントットの最初のおきゃくさまです。

迷子さん いらっしゃいませ

迷子さん いらっしゃいませ

フィレンツェでの修行を終え日本に帰国後、神戸の街の、海からずうっと山にむかって上る坂道の途中、細い路地の片隅に小さな工房を兼ねたお店をひらきました。
知り合いの誰もいない土地でのオープンは、そのちいさな扉をひらくことだけ。
オープンして一週間は、ほとんど誰もお店にはいってくることがありませんでした。

あまり人通りのない場所ですから、お店に入ってくる人と言えば、
路地を間違えて曲がってしまった人、といった具合です。

迷子になった人との出会いを重ねて、
すこしずつ、クアラントットのジュエリーは旅立っていきました。

そんな奇跡のような出来事が、ひとつ、またひとつ・・・。

今も 変わらないこと

今も 変わらないこと

そのあと、たくさんの方々の支えと応援のおかげでクアラントットは今の姿になりました。
日ごろ頑張っている自分へのご褒美に。
ジュエリーを身につけることがなかった人が、どんどんピアスの穴を増やしたり。
お守りのように、ずっと身につけてくださっている方。
クアラントットのジュエリーを身につけてくださった方それぞれに、いったいどんなストーリーが生まれているのだろう?と想像しながら、私は今も、光の入るカフェの片隅で、デザインを考えています。

  • Designer|クアラントットのデザイナー
  • History|クアラントットのヒストリー
  • Making|クアラントットのメイキング
  • Material|クアラントットのマテリアル