2017.10.30
宝石鑑定士ブログ
宝石小話(ナチュラル)
10月の長い雨で晴れるのを待ちわびていたら、2週連続で週末に台風がやってきました。
皆さま大丈夫だったでしょうか。
今週からはぐっと気温も冷え込んで、季節は足早に冬へと向かっていきます。
新緑の春・夏もいいですが、秋には紅葉など大自然の色の変化がとてもきれいで趣があって私は大好きです。
今回は宝石名につけられる「ナチュラル」という用語についてのお話です。
英語のNTURALの意味は、自然の、自然界の、自然のままの、加工しない、自然の過程による、自然的な、生まれつきの、生得の、普通で、平常で(weblioより)となっています。
意味のコアとして“人の手が加えられていない”=自然ということです。
宝飾品でナチュラルという用語が使用される場合は次の2つの観点があります。
素材自体が天然なのか人造の物なのか。
宝飾品で扱われる素材として、天然宝石(鉱物や一部の有機宝石素材)が一般的ですが、アクセサリーやコスチュームジュエリー等まで広げると、ガラスやプラスチックやその他の素材による模造品など天然でない素材が使用されています。
20世紀には、人類は天然の鉱物と同じものを研究室で作り出すことに成功しています。
これらは合成石(Synthetic)と定義されています。
クアラントットで使用される宝石素材はすべて天然「ナチュラル」になります。
もう一つのナチュラルは色の起源(Color origin)についてで、その素材の色が天然のものか人為的な処理によるものなのかというものです。
ルビー、サファイアをはじめ多くの宝石が色の改善のために加熱処理を施されています。
宝石の処理には多種多様なものがありますが、この加熱処理自体は古くからある伝統的な方法といえます。
明度が低い(暗い)石を明るくしたり、彩度が低い石の鮮やかさをアップさせたり。
ルビー、サファイヤでは流通するものの95%以上が処理されているということです。
そんな中で、処理をしなくても最初からカラーが素晴らしい素材というものはとても希少性が高く高評価になることは当然ですね。
ルビーのような希少性の高い宝石では、鑑定鑑別機関による専門的な検査を行うか、原石入手先からの証明などがあって、ナチュラル或いは非加熱といった表記をします。
Hummingbird ハミングバード【ハチドリ】
ナチュラル・ピジョンブラッド・ルビー ネックレス
確かにルビーは赤い宝石の代表であり、純粋な色が求められるのはよく理解できます。
しかし、様々なカラーで産出する宝石達のありのままの色を大切にする考え方もありますね。
例えばライトブルーの宝石アクアマリンは、コランダム同様にほとんどが加熱処理によって、グリーニッシュブルー(緑みを帯びた青)の原石がより純粋なブルーになります。
処理を施さない自然のままの明るいグリーニッシュブルーで綺麗な石は今日ナチュラルカラーとしてとても人気があるのです。
アクアマリンの名前の由来は(海の水)、グリーンの要素がありむしろアクアマリンらしいのはこちらかもしれません。
Canto di gioiaカント ディ ジョイア【喜びの歌】
ナチュラル・アクアマリン リング
次に紹介するナチュラルはダイアモンドです。
Via di vento ヴィア ディ ヴェント 【風の道】
ナチュラル・ダイアモンド リング
Me stesso メ ステッソ 【ありのままの私】
ナチュラル・ダイアモンド ネックレス
ダイアモンドはもちろん天然です。DカラーVVS1等、4Cでクラスづけられるブライダルのダイアモンドと本質的には同じです。
ここでの「ナチュラル」はこの個性豊かなカラーは天然のまま、人為的なことは何もしていませんという意味と、自然界に溢れる岩や土などの色、俗にいうアースカラーのダイアモンドという意味のネーミングです。
ファッションの世界では以前からナチュラルカラー、アースカラーといえば、ベージュやカーキ等の茶色系を中心に用いられてきた表現ですね。
4Cのダイアモンドとは違って、それぞれの石の色とカット形状の個性を楽しむ宝石です。
そして、光をキラリと強く反射してくる様はダイアモンド光沢(硬度10という地球上で一番硬いダイアモンドだけが持つことができる最高の光沢)であり、他の宝石にはない特徴ですね。
ナチュラル素材は数に限りがあり、いつでもお店にあるというものではありません。
入荷次第インスタやブログなどでご案内致しております。
素敵な出会いがあるといいですね。
コーディネート例は
クアラントット スタイリスト インスタグラム
https://www.instagram.com/quarantotto_stylist/
クアラントットインスタグラム
https://www.instagram.com/quarantotto/
GIA GG(米国宝石学会 宝石学修了者)
クアラントット宝石鑑定士
宝石学講座元講師
山本ウィリアム登喜生 Tokio WILLIAM Yamamoto