2017.11.25

宝石鑑定士ブログ

宝石小話 (ガーネット 1)

 

今年ももう残すところ1カ月ちょっと。街のBGMにクリスマスソングが流れ始めています。

ガーネットは1月の誕生石なので、年明けにと思っていましたがとても個性豊かなガーネットたちが沢山入荷していますので、前倒しでガーネットを紹介したいと思います。

 

その昔ガーネットといえば赤い石を思い浮かべる方がほとんどでした。
その名前はラテン語で、grana-tum (暗赤色)、あるいは granatus (種子) に由来するといわれています。
菱形12面体という丸みのある結晶の形が種に似てみえるのです。

日本でも多数の粒状の結晶で産出することから、柘榴(ザクロ)石という和名で呼ばれています。

 

古代文明では、赤色の宝石は血を連想させるものであり、レッドガーネットには止血作用があり炎症を治すと考えられていました。旧約聖書にも記述があるような古くからある宝石です。

皆さまご存知のように今では赤色以外のガーネットもよく見かけるようになりました。
赤い色に限らず、ガーネットはすべて1月の誕生石で、水瓶座の占星宮です。

 

カラーバリエーションは、サファイアやトルマリンにも負けず劣らずで、レッド、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー*、パープル、カラーレスまであります。
(ブルーはカラーチェンジガーネットの昼光下での色として見られます。)

 

宝石の分類をするときに、「宝石種」(基本的な化学組成と結晶構造により定義される)とさらに「宝石変種」(色や特殊効果その他の理由でさらに細分化されるサブカテゴリー)があります。

赤い宝石の代表ルビーは、サファイアのところでもお話ししましたが、宝石種は「コランダム」、赤い変種「ルビー」ということになり、変種名が宝石名になっています。
ダイアモンドは宝石種でありそのまま宝石名になっています。変種名というのはありません。

そしてガーネットというのは宝石名として使われていますが、実は宝石種でも変種でもありません。鉱物学的には色々な種類の宝石種からなる「グループ」の総称名になっています。
この「グループ」の定義は、構造や化学組成の類似した2種類以上の種の集まりとなっています。

ガーネットでは、6つの基本的な宝石種がありそれぞれ化学組成が少しずつ違います。
そして自然界ではそれらが混じっている状態(専門的には固溶体と呼びます)の物が存在するのですが、近年発見開発された産地から多種多様なガーネットが産出しているので、ガーネットグループは宝石としては一大ファミリーを形成して賑わっているわけです。

基本の6つの宝石種
アルマンディン
スペサルティン
パイロープ
グロッシュラー
アンドラダイト
ウバロバイト

このうち上から3つはよく知られています。

アルマンディン アルマンダイトとも言います。古くからある暗赤色が特徴です。基本組成の鉄が色因です。

スペサルティン 基本組成マンガンの為オレンジカラーが特徴です。

パイロープ   上2つの種の鉄やマンガンの代わりにマグネシウムが基本組成に入ります。   
     純粋なパイロープはカラーレスになるのですが、不純物の鉄やクロムなどの存在で赤くなります。
     微量元素クロムが入ったパイロープではルビーに匹敵するような鮮やかなレッドの石があります。

この3つの種の間に様々な中間タイプが生じます。
「ロードライト」というパープルカラーのガーネットがありますが、これは鉱物学的にはパイロープとアルマンディンの中間体になります。

Profumo Mio プロフーモミオ 【私の香り】
ロードライトガーネット リング

 

 

昼光下と電灯光下で異なった色を見せる「カラーチェンジ」ガーネットはパイロープとスペサルティンの中間体になります。
カラーチェンジしないものはパイロープ-スペサルティン、もしくはスペサルティン-パイロープと成分の比率から呼ばれることになります。

 

Insolito per me インソリート ペール メ 【いつもと違う私】
カラーチェンジガーネット リング

 

そして極めつけは「マラヤ」ガーネットです。スペサルティン、パイロープにさらにアルマンディンの要素が加わる中間体になります。

現地の言葉でマラヤとは部外者、よそ者といったような意味があるのですが、カラーが混じりあったような印象の為かそのように呼ばれるようになりました。(鑑別上もどのタイプにも属さない中間体でもあります)
またこの用語は俗語としてあまり好ましくない意味を指すことがある為、産出地であるタンザニアの東部のウンバ渓谷にちなみ「ウンバライト」とも呼ばれます。

色味はピンクからオレンジ、パパラチャサファイアのような色の範囲を持つ魅力的な宝石です。

 

Profumo Mio プロフーモミオ 【私の香り】
マラヤガーネット リング

 

 

今回はここまで、また引き続き紹介していきます。

 

コーディネート例は
クアラントット スタイリスト インスタグラム
https://www.instagram.com/quarantotto_stylist/

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GIA GG(米国宝石学会 宝石学修了者)
クアラントット宝石鑑定士
宝石学講座元講師
山本ウィリアム登喜生 Tokio WILLIAM Yamamoto