2018.01.29

宝石鑑定士ブログ

宝石小話 (ダイアモンド選びと4C その2)

 

ダイアモンド選びをする際の4Cの考え方について、前回(第1回目)は一つ目のCとしてダイアモンドのキャラット重量(Carat)を取り上げました。
重量は石の大きさと連動するので大切な項目であるということをお伝えしました。

今回は、二つ目のCとしてカット(Cut)についてみていきたいと思います。

ダイアモンドのグレーディングレポート(鑑定書)等をご覧いただくとすぐわかりますが、カットのグレードはエクセレント(Ex)、ベリー・グッド(VG)、グッド(G)、フェアー(F)、プアー(P)の5段階になっています。

カット以外の3つのC(カラー、クラリティ、キャラット重量)は、希少性に基づく価値評価であるのに対して、カットはダイアモンドの最終的な美しさに直結する重要項目です。

クアラントットでは、5段階の真ん中のグレード「グッド」以上のダイアモンドをお勧めしております。

グッド~ベリー・グッド~エクセレントと、グレードが上になればお値段も高くなります。
4Cの他の項目同様、ご予算に合わせてベストの組み合わせを求めることになります。

 

美しさに直接関わるカットグレードですが、ベリー・グッドやグッドは輝きが悪いのかというとそう単純ではないのです。

実は、4Cのうち、カットが最も複雑で、分析するのも技術的にとても困難なものになります。
20世紀半ばにダイアモンドの評価基準である4Cを生み出したGIA(米国宝石学会)ですが、カットについては長い間グレーディングを行ってきませんでした。
カットグレーディングシステムを開発するのに十数年かかり、2006年になりようやく発表されたのです。

ここから少し、石選びの際に留意していただきたいポイントを説明したいのですが、難しいことは苦手と思われる方は、GIAが長い期間の研究の末自信をもって発表したカットグレーディングシステムで評価された最上のカットグレード エクセレント(Ex)をお選びください。

しかし、カットの良し悪し、輝きには好みの問題もありますので、少しだけ我慢して読み進めていただけると嬉しいです。

 

同じエクセレントカットの石でも2つ並べてみると違う印象を持つかもしれません。
石選びは鑑定書などの文字を見て行うだけではなく、実際にダイアモンドをご覧になって輝きを確かめることが大切です。

では何を確かめればよいのか。

ダイアモンドの美しさ=輝きには3つの要素があります。
ブライトネス(ブリリアンス)、ファイアー、シンチレーション。

「ブライトネス」はダイアモンドの表面及び内部から観察者の目に戻ってくる白色光。
「ファイアー」はダイアモンドから観察される虹色の光。
「シンチレーション」は、ダイアモンド、観察者、あるいは光源が動くことで見られるきらめきですが、動的なきらめきを意味する“スパークリング”と静的な外観である、明るい部分と暗い部分の相対的な大きさや配置、コントラストなどのことを意味する“パターン”の2つを含んでいます。

この3つ要素を確認していただきたいのです。

好みが出るポイント

ブライトネスとファイアーの比率

石に照射される光が一定です。その反射であるこの2つ要素の関係は、ブライトネスが多くなれば、ファイアーは減少し、逆にファイアーが多くなればブライトネスが減少します。
同じエクセレントカットであってもこの2つの要素のバランスは同じではないのです。

ファイアーが強めの石は少し暗い石に見えてしまうかもしれません。またブライトネス(日本語ではテリともいわれます)が強めの石では、虹色の光は弱く物足りなく見えるかもしれません。

 

シンチレーション(パターン)の変化

ダイアモンドの輝きをよく観察すると、明るい部分と暗い部分のモザイク模様の展開の仕方が様々あります。石の大きさが同じであってもモザイクの一つ一つが細々とした印象の石、やや大きめに見える石。小さい石の中で起こっている違いです。ほんのわずかな違いなのですが、力強さを感じたり、あるいは繊細さを感じたりと異なる印象を持たれることでしょう。

カット(プロポーション)の要素には各ファセットの大きさ(%)や角度等がありますが、ブライトネスとファイアーの比率や見え方、パターンに直接影響する5つの項目で、エクセレントとされる石の単純な組み合わせでも1万通り近くあるのです。

そして、輝きの外観(印象)には個人の好みがあるので、グレードが異なる石で見比べた場合でもグレードが低いほうが綺麗、あるいは魅力的と感じる可能性があるということをお伝えしたかったのです。

 

難しい説明はこの辺にしておきましょう。

実際に石を観察するときには、ダイアモンドルースが入ったケースをゆっくり角度を変化させて動かしてみてください。パターンの変化や明るさはどうか、石の上を転がるように動いて見える虹色の光は魅力的か。光源の種類によっても見え方は変わりますので、お店の照明、ペンライト等色々試してみてください。

 

「トリプルエクセレント」について

GIAのカットグレードは5段階でエクセレント(Ex)が最高グレードなのですが、「トリプルエクセレント」と呼ばれるものが存在しています。この用語は本家GIAでは使われていません。
信用格付けなどのトリプルA「AAA」等とは少し違いますので説明しておきたいと思います。

カットの要素の中でポリッシュ、シンメトリーという要素があります。
ポリッシュは研磨したファセット面の仕上がりの良さの状態、シンメトリーはファセットの対称性や配列などの正確さのことで、それぞれ5段階で評価されます。
ポリッシュ、シンメトリーはあわせてフィニッシュと呼ばれます。

カットグレードでエクセレント(Ex)となる石は、プロポーションを決定する要素全ての評価がエクセレント(Ex)でなければなりません。
もし、一つの要素でもベリー・グッド(VG)評価があればその石のカットグレードはベリー・グッド(VG)となります。

そして、ここが少しわかりにくいところなのですが、カットグレードと、フィニッシュのグレードは1グレードのずれがあり、ポリッシュ及びシンメトリーの評価がベリー・グッド(VG)であればカットグレードはエクセレント(Ex)になれます。

(もしフィニッシュのグレードがグッド(G)になると、その他のプロポーションの要素の評価が全てエクセレントであってもカットグレードはベリー・グッド(VG)となります。)

そしてフィニッシュ項目までエクセレント評価に仕上げましたという石が、カットグレード(Ex)、ポリッシュのグレード(Ex)、シンメトリーのグレード(Ex)、と3つのExが揃うのでトリプルエクセレント(3Ex)と呼ばれているのです。

フィニッシュ項目がエクセレント(Ex)になる石というのは、10倍に拡大して熟練者が観察しても変化・特徴が認められない、あるいは発見が困難というようなレベルになります。
ではベリー・グッド(VG)ではどうかといえば、ポリッシュでは10倍での観察で研磨したときにできるライン(研磨痕)が狭い範囲にかすかに見えるとか、シンメトリーではやはり10倍拡大下でファセットの形が僅かに変化している等の特徴が見られる、といったものです。

フィニッシュ項目のエクセレント(Ex)とベリー・グッド(VG)の違いは肉眼で見てわかる美しさの差ではなく、研磨職人がどれくらい注意を払って仕事をしたのか、仕事に時間をかけたのか等を考慮する「クラフトマンシップ」に繋がる要素です。
高品質へのこだわりの要素ととらえていただければと思います。

 

H&C(ハートアンドキューピッド)や華票(はなしるべ)について

日本の鑑定鑑別機関が独自に打ち出しているサービスで、シンメトリーの良さを一般消費者にも理解しやすい画像にして確認できるものです。
特殊な照明器材条件下でのみ観察あるいは撮影する事が出来るラウンドブリリアント・カット独特の画像で、詳しくはそれぞれのホームページでの説明をご覧になって下さい。

H&C(ハートアンドキューピッド)
http://www.cgl.co.jp/services/heart-cupid.html

華票(はなしるべ)
http://www.agt.jp/subreport/

H&Cや華票はカットグレード エクセレント(Ex)の条件ではありません。
カットグレードがベリーグッド(VG)であっても観察されることもあります。
またトリプルエクセレント(3Ex)であってもH&Cが出ないものもあるわけです。

しかし、これらが観察されるということは、プロポーションやファセットのシンメトリー(均一性や対称性)がかなり良いことだけは間違いありません。

 

カットグレードを参考にしながらも、実際にご自身でご覧になられて、美しさに納得できるものをお選びいただきたいと思います。

カットに関してはとにかく最上のもの(高品質へのこだわりも含めて)が欲しいということであれば、トリプルエクセレント(3Ex)H&Cをお選びください。

 

Finestra  フィネストラ 【バラ窓】 K18 0.205ct Dカラー IF 3Ex H&C

Fiore  フィオーレ 【花】 Pt 0.213ct Eカラー VS1 VG

 

コーディネート例は
クアラントット スタイリスト インスタグラム
https://www.instagram.com/quarantotto_stylist/

クアラントットインスタグラム
https://www.instagram.com/quarantotto/

 

GIA GG(米国宝石学会 宝石学修了者)
クアラントット宝石鑑定士
宝石学講座元講師
山本ウィリアム登喜生 Tokio WILLIAM Yamamoto