2018.05.21

宝石鑑定士ブログ

宝石小話 (ダイアモンド選びと4C その4)

 

ダイアモンド選びをする際の4Cの考え方について、第1回目はキャラット重量(Carat)、第2回目はカット(Cut)第3回目カラー(Color)についてお話をしました。

最後のCは「クラリティ(Clarity)」です。

クラリティは日本語訳が難しい英語です。「透明度」「透澄度」などと訳されますが、ダイアモンドの評価基準では純粋さを評価する分野となっています。

天然の宝石ダイアモンドの結晶が規則正しく欠陥もなく、不純物も取り込まず完璧な状態に成長したものを純粋とした場合、実際のダイアモンドにはミクロレベルのものから肉眼で見てもわかるような不純物が取り込まれていたり、構造上の欠陥もミクロレベルのものから肉眼で容易に分かるものまでが内包されているのが一般的です。

ミクロレベルの不純物や構造上の欠陥は前回のC「カラー」に影響を与えることがあります。
「クラリティ」では10倍の拡大検査で確認できるサイズのクラリティ特徴がグレード付けをする際の考慮対象となります。

純粋なものに対する不純物、完璧なものに対する不完全さ、欠陥などの用語が立つわけですが、クラリティ特徴は決して欠陥やキズというものではないのです。

産出したダイアモンドの半数ほどが宝石として扱われます。(残りは工業用ダイアモンドとして扱われます)
宝石品質のものは、クラリティ特徴と呼ばれる石の内部、外部にある様々な要素が「どれほど目立たないかの印象(相対的な少なさ)」によってFl(フローレス)、IF(インターナリーフローレス)、 VVS1,2 VS1,2 SI1,2 I1,2,3 の11のグレードにランク付けされています。

Iクラスでは肉眼で見えてきますが、それ以上のグレードではまず見えません。
したがってクラリティは美しさではなく、そのクラスの石がどれ程とれるのかという希少性(出現率)に基づく価値になります。

因みにVVSはVery Very Slightly Included (非常に・非常に・僅かに内包された)という意味の頭文字をとったものであることは皆様ご存知の事と思いますが、その程度はどのようなものかといいますと、VVS1では10倍拡大下で「熟練したグレーダーが検査をして発見することが極端に困難」な特徴があり、VVS2には同じく「熟練したグレーダーが発見することが非常に困難」な特徴がある、と定義されています。

また、この拡大検査では「暗視野照明」という宝石の品質検査での標準照明環境が必要になります。これが整っていないと10倍に拡大してもインクルージョンなどが見えづらい(あるいはまったく見えない)のです。

VVSクラスの石に見られる典型的インクルージョン(内包される特徴)としてピンポイントというものがあります。その正体はダイアモンドに取り込まれ結晶(ダイアモンドの結晶や別の鉱物の結晶)なのですが、その大きさが余りに小さくて形もわからず、ただの点にしか見えないのでこの名前になっています。

宝石学校時代、ダイアモンドグレーディングの実習でピンポイントが発見できない実習生には、宝石顕微鏡で2,30倍の拡大で見えるようにセットしておいて、それを10倍まで倍率を落として見え方を確認してもらっていました。熟練したグレーダーでも発見が困難な程度ですのでビギナーが発見するのはとても大変です。

ダイアモンド選びの組み合わせでは、予算の都合で大きさや、カラーを優先して、クラリティグレードをVVSクラス、VSクラス、SIクラスへと抑えるのもいいでしょう。クラリティ特徴は肉眼では見えず、通常は美しさには影響していないのです。

しかし、クラリティグレードに純粋さを求めるのであれば、VSクラス、VVSクラス、と上のグレードを選びたいものです。VS1では熟練したグレーダーが見つけることがやや困難な特徴しか含まれていません。

最高の純粋さを求めるなら、フローレス(FL)、インターナリーフローレス(IF)になります。FlやIFでは、熟練したグレーダーであっても10倍下では何も見えない最高のグレードになります。

ダイアモンド選びでは、輝きについてはカットとキャラット重量(大きさ)を、純粋さについてはカラーとクラリティを考慮しつつ、最善の4Cの組み合わせとなるダイアモンドをお選びください。

 

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コーディネート例は
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GIA GG(米国宝石学会 宝石学修了者)
クアラントット宝石鑑定士
宝石学講座元講師
山本ウィリアム登喜生 Tokio WILLIAM Yamamoto