2018.08.04

宝石鑑定士ブログ

宝石小話 (ハックマナイト)

 

今週末から店頭にデビューしたとてもユニークな宝石、「ハックマナイト」をご紹介します。

和名はハックマン石と呼ばれますが、これはフィンランドの地質学者であるビクター・アクセル・ハックマンに因んで名づけられたものです。

ソーダライトという宝石・鉱物があります。ラピスラズリの一成分ともなる鉱物ですが、ブルー~ダークブルーの不透明~半透明の宝石として知られています。

ハックマナイトはソーダライトの変種で、主成分の塩素に置換した硫黄を含み、蛍光性・燐光性・退色性などの特性があります。

ハックマナイトが初めて発見されたのは19世紀の終わりですが、宝石品質のものが発見されたのはそれから100年ほど過ぎた1991年になっての事でした。

とても希少な鉱物でしたが、変わった特性を持つことからコレクターズアイテムとして人気がありました。
近年ミャンマーやアフガニスタンから上質素材の産出があり、ジュエリーとしても使用されるようになってきました。

 

ハックマナイトのユニークな特徴

あるハックマナイトのカラーの変化
発見当初 明るい~暗い バイオレット、パープルピンク
昼光に触れて退色 ホワイト、グレー、グリーニッシュグレーに

光にさらされて退色する鉱物は珍しくないのですが、このハックマナイトは紫外線にさらすと色が戻ってきます!

これは、アレキサンドライトに見られるカラーチェンジ(変色効果)とは異なるものです。
変色効果は光源の種類の違いにより劇的に異なったカラーを示すというものです。

ハックマナイトの方は、照射する光に特定の波長があること(或いはないこと)により、光の選択的吸収が変化してしまうのです。

英語ではReversible photochromism (リバーシブル ホトクロイズム)と呼ばれるような現象で、身近なところでは「調光サングラス」があります。
調光サングラスは外出時紫外線を受けてガラスが色づきサングラスになります(紫外線の強さで濃さが違います)が、室内に入り紫外線を受けなくなるとゆっくりガラスの色がなくなっていきます。

 

店頭で初めてご覧になられるときは、お店の照明下で退色したカラーになっていることでしょう。そのカラーは個体差がありますので様々ですが、ホワイト、グレー、ブルーバイオレットなどでしょう。
採掘したてのカラーからすると退色になりますが、通常ではこちらのカラーが基本色という考え方もできます。

Cabriole( カブリオーレ )【 猫脚 】リング ハックマナイト 

 

お店に用意されているUVライトでハックマナイトを照らしてみてください。
照らしている間は、蛍光します。強さとカラーはやはり個体差がありますが、オレンジやオレンジピンク、パープルレッドの光を発します。
(紫外線蛍光とは、人間の目に見えない紫外線の波長エネルギーを目に見える光線エネルギにーに変えて放出=発光することです)

UVライト照射中のハックマナイト

 

照らすのを止めると、蛍光はなくなりますが、ハックマナイト自体のカラーがはっきりと色づいているのが判ると思います。

紫外線を吸収した結果、パープル、バイオレット、パープルピンク等になっているのではないでしょうか。

UVライト照射後 カラーが変化したハックマナイト

 

今年の夏は異常な暑さですね。日差しもとても強いので外に出て直射日光にこの宝石をさらすとやはりカラーが強くなります。紫外線が強いということですので日焼け・熱射病の元です。もし実験される場合は短時間にして下さいませ。

もちろん、採掘当時の一番強いカラーを取り戻すことは不可能なことと思います。(採掘時その場に居合わせてませんので最初のカラーは不明ですが、、)UVライトで少し長めに照らしてあげることでカラーは強くなります。

そして通常の照明下に戻すと、ゆっくり退色(変色)していきます。

 

この宝石を100%楽しむためには小道具(UVライト)が必要ですが、マニアックでとても楽しい宝石です!
(お買い上げの方にはUVライトプレゼントいたします)

是非各店の店頭でご覧くださいませ!!

 

 

コーディネート例は
クアラントット スタイリスト インスタグラム
https://www.instagram.com/quarantotto_stylist/

クアラントットインスタグラム
https://www.instagram.com/quarantotto/

 

GIA GG(米国宝石学会 宝石学修了者)
クアラントット宝石鑑定士
宝石学講座元講師
山本ウィリアム登喜生 Tokio WILLIAM Yamamoto